「自炊」代行許諾制(読売新聞13年3月26日、37面=社会面)について

自分で所有する書籍(蔵書)を、デジタル化したいというニーズは大きい。多くの書籍が電子書籍として売られ、多くの人がそれを、Kindle やiPad、楽天kobo 、スマホなどのデバイスで読むようになった。自宅の蔵書も、電子化してデバイスで読みたい、と考えるのは当然だ。自宅の蔵書すべてを持ち歩くことが可能になるし、また、本棚のスペースも不要になる。

現在、著作権法では、蔵書のコピーも同じなのだが、私的複製は可能となっている。蔵書の電子化は、その本を裁断して、スキャンしてPDFにする必要がある。それを「自炊」という。この作業は大変である。巨大な裁断機(キケンですよね・・)と、スキャナーが必要で、その読み取りにも、時間のかかるし紙送りのミスも生じる。

この作業を、1冊100円といった料金を取って代行する業者がある。自炊の費用と手間を考えれば、この100円という料金は安く、業者は多くの客を集めている。しかし、著作権法で認められているのは、自宅などで、個人が、自分のために行う自炊=複製、だけであり、それを代行業者が行うことについては、法解釈には幅があるが、グレーである(違法である可能性がある)ことは間違いない。実際、自炊代行業者が著作権者に訴えられている。

今回の、【「自炊」代行許諾制】、は、これを、著作権者が複製を認め、また一冊数十円程度の著作権使用料を利用者から取る仕組みを作ることで、認めていこう、というものである。

たとえば、視覚不自由な方は、紙の書籍を持っていても、それを「読む」ことはできない。しかし、それを電子書籍にして、音声読上げ対応にすれば(OCRにかける)、その本を耳で聴けることになる。もちろん、視覚不自由でない方も、たとえば通勤電車で、本を耳で聴くことが可能になる。

蔵書の電子書籍化(PDF)は、代行料の現在の100円に加え数十円の使用料を払うことで、自由に行えることになる(著作権者の許諾が必要だが)。さらに、おそらくそこに数百円を加えれば、OCRにかけて音声読上げ対応になる(100%の精度はまだ難しいが・・)。

この試みが順調に進むことを期待したい。

(本稿は、この制度の正式な記者発表前に書いたもので、また、係争中の事案でもあるので、あえてあいまいな表現を使ったところがあります。)