タクシー料金と規制緩和

 東京のタクシー料金が、3日、初乗り660円が710円へと値上げになった。燃料費の高騰などが理由であれば、仕方ないであろう。
 しかし、一部で規制緩和との関係で値上げが論じられているのは問題だ。
 タクシー業界では、2002年2月から、タクシー会社の増車や、タクシー会社への参入が基本的に自由に。この結果、各地域でタクシー台数は増加。その一方で利用者は増えずに、タクシー会社や運転手の収入が増えなかったり、減少したり・・。
 そこで、タクシー会社が値上げを申請。つまり、5年前の規制緩和が、今の値上げのきっかけになっている、という理屈である。
 この理屈はおかしい。タクシー会社は自由な企業であるから、儲かると思ったら増車をする。結果的に、会社の売り上げが伸びなかったというのは、その会社の経営判断の誤りである。もし、5年前の規制緩和が誤りだというのであれば、タクシー会社各社は、増車を認められなかった。
 今、500円タクシー(ワンコインタクシー)は、20台から70台へと増車している。それだけの利用者のニーズがあったからだ。また、高級車両を使うタクシー会社が、人気を集めて、増車している。
 これらの増車が認められない、ということは、料金が安い会社も、サービスがいい会社も、台数が変わらず、売り上げも実車率が向上しても、そんなには伸ばせない。そうであれば、そもそも料金やサービスで競争すること自体が損、ということになる。
 逆に、料金やサービスで競争しようとしない会社も、それなりの収入が確保されることになる。
 こういった状態を変えようとしたのが、規制緩和であった。経営努力のないタクシー会社は、減車するなり、撤退するなりするしかない。他の業界では、売り上げの伸びない企業の撤退は当たり前のことだ。
 私自身、よくタクシーを利用する。東京の場合は、ほとんどの会社が同じ料金である。違いはサービス。運転手さんの態度、使う車両のレベルなど、驚くほどの格差がある。タクシーを止めるときに、なるべく会社を選ぶようにしている。そういう会社が売り上げを伸ばし、台数をふやしていくのは、当然だ。
 タクシーの規制緩和の最大の問題は、競争激化のしわ寄せが、運転手さんの労働時間が延びることで、疲労による安全の低下である。しかし、勤務時間も法律等で定められているのだから、その遵守こそが重要である。それが守られないということになれば、それを遵守させる仕組みの強化が必要なのであって、規制緩和の見直しを求めるのは筋違いである。