ネット選挙について⑤(完)

ここまで、ネット選挙の解禁の必要性を述べてきた。ここでは、より広く、ネットと政治の関係について、考えてみたい。

そもそも、ネット選挙解禁の前に、ネット上での政治的な活動一般の在り方も問われる必要がある。振り返ってみるに、政治家にも一般の方にも日常的に許されている、ネット上での政治的な情報発信、発言、やりとりなどが選挙期間だけ認められなかったことが、問題だったのである。今回の解禁によって、メールを除いて、日常的に行われているネット上の政治的な情報発信や意見交換(以下、ネット政治と)が、選挙期間中も認められることになる(はずである)。 このことは、ネット選挙解禁の効果は、日常のネット政治の在り方に依存することを意味する。この点からすると、私は政治家の日常のネット利用には大きな不満があり、このままでは、ネット選挙を解禁しても、十分な成果が挙げられない懸念もあるとみている。

ネット、とりわけSNSの最大のメリットのひとつに、双方向性があげられる。Twitterには、リツイート(メンション)機能がある。Facebookには、コメント機能がある。この機能を活かせば、一般の方が、政治家にネット上で質問することが可能である。また、一般の方が、政治家のSNSでの発言に、質問したり反論することが可能である。 しかし、ごく僅かな政治家を除いて、政治家のネット利用は、一方的な情報発信に限られており、本来の有権者との意見交換は行われていない。これでは、ネット選挙が解禁されても、一方的な情報発信だけであれば(それだけでも、大変なメリットがあると繰り返し述べてきたのではあるが・・・)、やや極端な言い方をすれば、それは単なる「電子ビラ」にすぎない。

ネット上で政治家と一般の方(市民、有権者・・)とが、日常的に意見交換をすることが、政治と市民の距離を変えていくはずである。有権者は、現在は3,4年に1度の選挙で、その間のすべての決定を議員に全面委任することになる。しかし、その間に起きるさまざまなことについて、議員に、政治に意見を述べることが必要であり、議員、政治家はそれを汲み取る必要がある。 ネットがなければ、この政治家と有権者との意見交換が、タウンミーティング、パブリックコメントなどに限られ、極めて限定されたものとならざるを得なかった。しかし、ネットを利用すれば、これが広範に、費用も時間もかけずに行われることができる。このネットの双方向性を、政治に活かすべきなのである。 ネット選挙解禁は、そのネットと政治の関係が、もっとも政治家と有権者の距離が縮まる選挙期間中に、緊張感をもって行われることに最大の意義があるはずである。私は、このネット選挙解禁を、単なる「電子ビラ」に終わらせずに、SNSの双方向性を政治に活かしていく、きっかけになるべきだと考えている。そのためには、選挙期間前から、私達が政治家に対して厳しい問いかけをして、政治家がそれに答えていく、という日頃からの活動が必要となる。幸い私は、25,000人ほどのTwitterのフォロワーがいる。また、NPO法人マニフェスト評価機構の代表理事をしている。こういった「資源」を最大限に活用して、政治家と有権者・市民との意見交換の場をネット上に作り、その延長で、選挙期間を迎えるという形を作って行きたいと考えている。

この政治家(選挙期間中は候補者)と、有権者の意見交換は、それを見ることで有権者の投票に非常に有力な情報を提供することになるはずである。すでに述べたように、ネット選挙解禁は、候補者から有権者への一方的な情報提供であれば、それは単なる「電子ビラ」にすぎない。候補者と有権者との双方向の意見交換をして、それを見ながら、有権者が候補者を決めていくことが、実はネット選挙解禁の大きな期待されるメリットであるのである。 そして、その双方向の意見交換が、選挙期間後は、政治家が有権者と意見交換しながら民意を汲み取る一つの手段として、継続されていくことが期待される。このことで、政治と市民の距離が縮まり、政治の在り方も変わっていくことが期待される。そして、そのような、市民との意見交換、民意のくみ取りを継続的に行なっている政治家が、次の選挙で当選するということになっていけば、多くの政治家がこのような意見交換をせざるを得なくなってくるはずである。 ネット選挙の解禁に、私が最も期待するのは、この点なのである。(了)