自炊代行へのニーズを満たせ

自宅の蔵書の自炊には、高い需要がある。自宅の本棚に本があふれた時に、従来は、古本屋やブックオフに。場合によっては捨ててしまわざるをえないことも。しかし、蔵書を電子化(PDF化)してしまえば、一気にスペースが確保できる。

この電子化の作業、一般的には本の背表紙を裁断し、ページをバラバラにした上で、スキャン機にかけてPDF化するという流れとなる。日本のしっかりと製本された本の背表紙を裁断するには、相当大きな裁断機が必要となる。スペースを節約するために、大きなスペースが必要な裁断機とスキャナーを置く矛盾。そもそも、値段もそれなりにかかる。

この作業を、業者に代行させたいとする需要が生じるのは当然である。それにこたえる、供給が出るのは当然である。いわゆる自炊代行業である。裁断、スキャンという自炊作業の代行料が、100円ほどとなると、皆が飛びつくのは当然である。大手の業者は、2ヶ月待ち、という状況にある。

一方、この自炊の作業は、著作権法の「複製」にあたり、著作者の許諾を得るか(著作権法第21条)、個人または家庭内の利用に限る(第30条)必要がある。この30条には、「その使用する者が複製することができる」とあるので、自炊を業者に代行させることは、ここに抵触する可能性が高い。また、著作者の側から見ると、個人が自炊した=PDF化した書籍データが、ネット上で違法流通することになると、その権利が大きく損なわれることになる。

こういった点を防ぐことができれば、著作者として私的使用の自炊を拒否する理由はないように思える。そもそも、自炊することで、本棚のスペースが空けば、新たな書籍が購入される。また、個人蔵書が古書店に流れなければ、その分だけ新刊の販売が増えることが期待される。

自炊されたデータが、ネット上で流通せず、PDF化した元の本が古書市場で流通さえしなければ、読者と著作者とのWin—Winの関係が築けるはずなのである。このためには、信頼できる自炊代行業者には、依頼者の個人使用に限って「複製」を認める道筋を探る必要がある。

Myブック変換協議会では、「これまで著作者はわがままだと言われてきました。でも、実はそんなにわがままじゃないんですよ。なので、今回は著作者が言い出しっぺでこの会を作りました。」と、後者の、つまり著作者が私的使用に限り、複製を認める方向で、このWin—Winの関係を作ろうとしている。

今、ボールは自炊代行業者に投げられている。たとえば業者が裁断した本を、再製本して古書市場に流すことは可能である。また、人気の本の自炊データを残しておいて、その本の自炊依頼には、過去の自炊データを渡してしまえば、業者の元に、未裁断の本が残り、それを古書市場に流すことも可能である。もちろん、自炊データのネット上への流出も懸念される。こういったことを一切行わない優良な自炊業者の存在がなければ、Win—Winの関係は築けない。

裁断本は、溶融なりの処理をして業者の手元に残さない。PDF化したデータも、業者の手元に残さず、同一本の自炊依頼にも、その都度、裁断・PDF化する。依頼者に戻すPDFデータに、ネット上で流通しない仕組みを作る。こういったことを確実に行う業者が、業界団体なりを作り、読者と著作者の信頼を得ることが必要なのである。