障害者差別解消法の実効ある施行のために

障害者差別解消法について 障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律、平成二十五年(2013年)六月二十六日法律第六十五号)が成立し、平成二十八年(2016年)四月一日に施行されることになった。民主党が作っていた法律案を、政権交代で自民党が引き継ぎ、かつ、衆参ねじれの中で成立させたのは「針の穴を通す」ようなものであった。(⇒当コラム2013年5月2日「障害者差別解消法の今国会成立を」http://satorum.net/?p=3847) また、この法律の成立を受けて、批准が遅れていた国連障害者権利条約Convention on the Rights of Persons with Disabilities=あらゆる障害者の、尊厳と権利を保障するための人権条約)2013年12月4日、参院で批准され、2014年1月20日、国連事務局で承認された。

まずはこの法律の成立と条約の批准は、日本の障害者政策からみて画期的なものであり、高く評価したい。  しかしこの法律が実効を持って施行されるためには、障害を持つ当事者の方、そして行政機関等、事業者、そして国民全体が、以下に示すこの法律の仕組みをしっかりと理解する必要がある。

 

①「社会的障壁の除去」には、障害者からの意思の表明が必要であること。⇒行政や事業者が自ら、社会的障壁の除去をするのではない。 ②「社会的障壁の除去」には、行政機関等や事業者(民間)があたるが、その際に「負担が過重でないとき」という留保条件がつけられていること⇒予算等の制約があれば、除去しなくてもいいということにも・・ ③「社会的障壁の除去」は、行政機関等は義務(上記の留保条件あり)であるが、事業者は義務ではない(さらに上記の留保条件あり)こと。  つまり、社会的障壁を「障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合」に、行政機関等は「負担が過重でないとき」に除去の義務が生じ、事業者は、「負担が過重でないとき」に除去の努力義務が生じる、ということである。  この法律の仕組みからすると、この法律が実効を持って施行されるためには、①障害者が意思の表明をする場(誰に、どうやって?)が明確であること、②その表明に対して迅速、明確な対応がなされること、③その対応には、「除去の可否、可の場合はいつまでに対応を始め、いつまでに完了するのか、否の場合はその根拠を示すこと」、などが含まれること、④その対応について、意思表明者が不満を持つ場合の相談・対応窓口が明確であること、などが必要となる。

たとえば、車いすを使用している障害者が、ある公立図書館で車いす用のスロープがなく図書館に入ることができないという「現に社会的障壁の除去を必要」としたという事態について、その障害者が誰に意思の表明をすればいいのか、またその意思の表明をした後に、どのような対応がなされるのか、そしてその対応に不満であった場合に、どこにその不満を申し出ればいいのか、これが、法律の施行時(2016年4月1日)までに制度的に確立している必要があるということである。 (了)