JR北海道の事故と国鉄民営化

JR北海道で、事故などが多発して、国土交通省の特別保安監査を受け「改善指示」を出される事態になっている。マスコミなどで、この原因を、国鉄分割民営化の6分割に求める論調が目立っている。JR北海道、JR四国、JR九州の経営安定基金に依存するいわゆる「三島会社」が、その経営安定基金の運用益が低金利で減少し、経営的に安全を軽視せざるをえないというものだ。しかしこれは、根拠を欠く議論である。

国土交通省が公表するデータに、「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報」がある。そこでの列車走行100万キロあたりの輸送障害発生件数(部内要因)【注】を見ると、JR旅客6社では、
JR北海道 2.68
JR東日本 1.63
JR西日本1.57
JR九州0.92
JR東海0.81
JR四国 0.76
と、JR北海道がトップであるものの、経営的に安定しているJR東日本が2位につけており、3位もJR西日本である。経営的に厳しい「三島会社」が輸送障害(部内要因)を多く発生させているということは、まったくない。(ちなみに、大手の鉄道事業者でもっとも障害発生件数(率)が低いのが、阪急電鉄で、0.08である。JR北海道の33分の1,JRでもっとも低いJR四国の9.5分の1である。)

一見わかりやすい、「鉄道の営業黒字が期待できず、経営安定基金に頼る『三島会社』だから事故が多発する」といった議論に惑わされず、冷静に輸送障害の発生原因やそれをどう減らしていけるのか、を議論する必要がある。

【注】2006年から2011年の列車走行100万キロあたりの輸送障害発生件数(部内要因)。
輸送障害とは、「列車の運休、旅客列車の30分以上の遅延等」で、部内要因とは「鉄道係員、車両、鉄道施設に起因する輸送障害」であり、部外要因とは「風水害・雪害、地震などの自然災害、線路内に人や動物が立ち入ったこと等による輸送障害」のこと。(出典:国土交通省鉄道局「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報(平成23年度版)」(平成24年7月)