NHK会長、経営委員問題を考える②・完

2006年の竹中懇談会では、NHKのガバナンス問題を真剣に議論した。当時から、1月31日付けの朝日新聞の紙面に載った、NHK関係者のような発言は繰り返し私の耳にも入ってきていた。経営委の権限強化が「政治が経営に直接介入」する余地を生む、と。

しかし、それにはNHKという巨大組織のガバナンスをどう機能させるのか、という難題の解はない。一般の株式会社には、株主総会というガバナンスが、政治には選挙というガバナンスがかかる。NHKのガバナンスは、国会同意人事の経営委員会にゆだねるしかない、が懇談会の結論であった。経営委員が政府の任命であれば、政府の影響を受ける懸念がある。だからこその、国会同意人事である。現代の日本で、これ以上中立性を担保する制度はない、といってよかろう。長く続いた衆参ねじれ状態の下で、日銀総裁などの国会同意人事でどれだけ混乱してきたか、を思い出して欲しい。

今回の経営委員は、久々のねじれ解消状態で選ばれた。その選び方が問題だということになると、衆参ともに、自民党に勝たせた国民の判断が問題だ、といわざるを得ないことになる。だからこそ私は、「会長を選んだ委員に問題があるなら委員を送り込んだ政権に次の選挙で『ノー』というしかない」とコメントしたのである。より強い中立性を担保するのであれば、例えばNHKの経営委員だけは、憲法改正のように衆参共に3分の2の賛成が必要とするとかないはずである。

私が驚いたのが、今回の会長発言を受けて、民主党が出した、経営委員会独立性強化のために、総務相の下に有識者で構成する「選定委員会」を新設し、そこが首相に経営委員候補リストを提出する、という方針である。国会同意人事を、政府の総務省の委員会が縛る、ということになる。公共性を担保する、いわば政府の好きにさせないための国会同意という制度を、政府の中の1府省の大臣の委員会にゆだねるというおかしさ・・・。

私は、政策の方向性が異なることについては、しっかり議論はするが寛容である。しかし、こういった論理的思考力の欠如事例に対しては、厳しい。この趣旨の法案(放送法改正案)をもし民主党が国会に出してきたら、たぶん、この政党の未来は限りなく暗いと断言していい。(了)