❏電子書籍アクセシビリティの研究

 電子書籍の普及が著しい。しかし、その音声読み上げや文字拡大機能などのアクセシビリティ機能に注目した研究はまだ少ない。2016年4月、障害者差別解消法が施行されたが、この法律によって、障害者は「社会的障壁」の除去を要求できることとなった。紙の書籍は、視覚障害者等にとっては社会的障壁となる。その除去の有力な方法が電子書籍化である。
 本書は、電子書籍のアクセシビリティ機能について総合的に研究した、我が国初の書籍である。本書では「視覚障害者等」だけでなく、老眼などで紙の書籍の利用が困難になった方や、通勤電車などでの音読のニーズなどを踏まえ杖で、電子書籍のアクセシビリティ機能の現状や将来の展望などを明らかにしていく。

 私は、視覚障害者等の読書について、「電子書籍普及に伴う読書バリアフリー化の総合的研究(立命館大学)」などで研究を進めてきた。その集大成が2017年1月に公刊したこの書である。
「この本自体が、電子書籍読み上げ機能の実験体です」
「出版段階から、一冊まるごと極力誤読を少なくして音声読み上げすることを前提に作られた初めての書籍です」。

とあるが、紙の書籍は、視覚障害者等の方には、点字にしたり、人声で読み上げたり、あるいはデジタル化して音声読み上げに対応したりすることで、提供されてきた。
 しかし電子書籍では、自動音声読み上げ(Text To Speech)に対応するものが多くあり、この機能を使えば視覚障害者等の方はそのままその電子書籍を聴読することができるのである。だが、このTTSでは、一定の誤読が生じる。例えば、私の名前の「聡」は、私の読みの「さとる」もあれば、「さとし」、「あきら」、「そう」など様々な読みがある。
 これを、電子書籍読み上げ機能が適切に判断することは困難で、結果的に誤読が生じてしまう。視覚障害者等の方の多くが、「多少誤読があっても、ともかく音読してくれるのがありがたい」と語るが、それでも誤読は少ないに越したことはない。そこで本書では、出版段階から誤読を少なくする工夫をしたのである。それが以下にまとめられている。


 ここまで苦労して誤読の削減に努めてきて、いざ公刊というときに大きな障壁が見えてきた。この本の出版時点(2017年1月)では、大学図書館への電子書籍の納本は、なんと音声読み上げに適応していなかったのである。
 電子書籍には、大きく分けて2つの形式がある。一つは固定レイアウト。これは、紙の書籍そのままを、電子化した、いわば絵本のようなものである。このため、文字を拡大すると、ページ全体が拡大されることになり、画面を移動させなければ読みすすめることができない。
 もうひとつが、リフロー形式である。これは、紙の書籍をテキストデータ化したものである。ワープロ文書で文字を拡大すれば、そのページから溢れた文字は、次のページに流れていく。この形式であれば、音声読み上げも可能となる。
本書は、日本初の大学図書館納本の電子書籍で、リフロー・音声読み上げに対応したのである。

1月30日に開催された公刊記念シンポのようすは、こちら、、
公刊記念シンポジウム

⇒松原 聡 Digital Space