カテゴリー別アーカイブ: 政策

従属人口指数

一国の人口を、年齢で3区分します。

年少(0~14歳)、生産年齢(15~64歳)、老年(65歳以上)。

生産年齢にある人口は、年少人口と老年人口を養わなければならないので、生産年齢人口に対する年少人口+老年人口の比率は重要な意味を持ちます。いわば、一国の扶養負担の大きさを表すのです。

少子化が止まり、人口が増え始めると、年少人口が増えていき、社会全体の扶養負担は増えていきます。また、その間、生産年齢人口が、老年人口にシフト(高齢化)していきますから、扶養負担はさらに大きくなります。

人口を維持する出生率は、2.07ほど。これを割り込んだのが1975年前後。その後、35年以上にわたって、出生率はほぼ低下を続けています。この出生率低下に有効が手をうてなかったことのツケが、今後やってくるのです。

出生率が増えなければ、人口減少が加速。出生率が増えても、当面は、従属人口指数が増大、つまり扶養負担増大、です。

平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼

 日本は憲法9条で、戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認を規定している。これは、前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義」を前提としている。国際社会が、オオカミの群れであれば、そこに非武装のヒツジを放つことはありえない。国際社会がヒツジ=平和を愛する諸国民の公正と信義=だという認識のもとに、日本はヒツジであることを憲法で規定したのである。
 しかし、憲法制定後、冷戦が勃発し、多くの戦争が起きた。決して、国際社会は「平和を愛する諸国民の公正と信義」で構成されるものではなかったのである。隣国の北朝鮮は、日本国民を拉致し、またミサイルを日本海に向けて発射する国である。そして今、隣国の中国が、日本にオオカミの牙をむき出しにしている。
 今回の尖閣問題で、外交テクニックの稚拙さが露呈した。しかし、その前提に、憲法前文のこの精神が、外務省、政府、そして国民の中に根付いていることが問題なのではないだろうか?
 私は決して、武装強化を望んでいるのではない。しかし、国際社会が、国益がぶつかり合う、オオカミの世界であることをまず国として認識して、そのうえでどうやって、国際社会の平和、安定に日本が寄与できるのか、その中での日本の国益をどう実現していくのか、が問われているのではないか。
 憲法前文の在り方を、国民的に議論しなけらばならない時期にきているのではなかろうか。
憲法前文「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」

レアアース備蓄法の制定をww

「この法律は、レアアースの備蓄を確保することにより、我が国へのレアアースの供給が不足する事態が生じた場合においてレアアースの安定的な供給を確保し、もつて国民生活の安定と国民経済の円滑な運営に資することを目的とする。」
もちろん、95%は皮肉なんですが・・。上の条文は「石油の備蓄の確保に関する法律」(1975年)の第一条の「目的」の「石油」を「レアアース」に読み替えたものです。当時は、OPECなどの原油価格引き上げ策などに対応するために作られたもので、今、その法律に基づいて国内各所に巨大石油備蓄基地が作られています。現在、官民あわせて半年分の備蓄が・・。
尖閣問題で、中国がレアアースの事実上の日本への輸出停止を、恫喝の手段として使ってきたようです。原油の場合は、輸出国が複数あるため、OPECなどの意見調整に手間取り、そう簡単に輸出制限などの措置は取れません。
しかしレアアースは中国がほぼ独占。たった一つの国の政策で、日本の産業が左右されるという「現実」が、今、明らかになりました。
確定している国境を、日本が侵犯したというのなら、「禁輸」も当然でしょう。しかし、尖閣での一漁船船長の逮捕で、レアメタル禁輸まで持ち出してくる国がお隣にあり、そこに経済の生命線を握られている、ことが「現実」なのですね。
今回の問題で、図らずも明らかになったこの「現実」。さあ、民主党政権、この現実にどう対応していくのか、外交の基本姿勢が問われることになります。

那覇地検「日中関係を考慮」

尖閣問題で、那覇地検は「日中関係を考慮」して、船長の釈放を決めた。この判断が、一地検の問題でないことは、誰の目にも明らかだ。そもそも、石垣簡裁が、9月29日までの拘置を認めている。検察の判断を超えて、裁判所までが認めた拘置を、期限を大きく残して釈放を決めている。
これは、政府の判断以外のなにものでもない。一部に、那覇地検の「日中関係を考慮」という判断を批判する向きもあるが、勘違いも甚だしい。一地検が、日中関係についての知識も判断力もない。あの発言は、上からの圧力への、担当次席検事の精いっぱいの抵抗とみるべきであろう。
今年、日中のGDPは逆転する。外交力までの逆転していいのだろうか?

厚労省独法・整理合理化委員会

厚労省「独法整理合理化委員会」の委員に、就任しました。長妻前大臣が、離任前に駆け込み設置した委員会で、12月までに答申をまとめ、それにもとづき次期通常国会に関連法案提出、ということです。設置目的は、以下。
「行政刷新会議又は厚生労働省においてこれまで実施してきた事業仕分け等を踏まえ、厚生労働省所管の独立行政法人、特別民間法人及び公益法人について業務内容やその実施体制を再点検し、これらの法人の統合・民営化・`地方移管・廃止含めた整理合理11方策を決定するため、「厚生労働省独立行政法人,公益法人等整理合理化委員会」(以下「委員会」という。)を開催する。」http://nk.jiho.jp/servlet/nk/release/pdf/1226499080069

藤沢DP(討論型世論調査)

 国、自治体の政策過程へ、「審議会」などの形で、市民や有識者などの外部の第三者が関与する制度は長い歴史を持つ。しかし、この制度が有効に機能してきたかというと、疑問を持つ人が多いように思う。審議会は行政の隠れ蓑、と言われてきたし、有識者の中には、官僚の言うままの発言を繰り返す「御用学者」と揶揄される方も少なからずいた。
 去る2010年1月30日、私は神奈川県藤沢市の慶應義塾大学にいた。この日、ここで、藤沢市が主催する「藤沢のこれから、1日討論」というイベントが行われており、その見学に訪れたのである。
 このイベントには、258人の藤沢市民が参加し、朝の9時から夕方5時すぎまで「藤沢のいま」と「藤沢のこれから」というテーマで討論を行った。集まった市民は、若者からお年寄りまで様々な年代に及び、会社員や主婦といった、通常の討論集会には集まりにくい人々も多数参加していた。まず、この参加者が、通常のタウンミーティングと違って、ランダムサンプリングで選ばれていることが重要である。タウンミーティングが、特定の課題に利害があったり、関心がある市民が集まるのに対して、サンプリングによって平均的な市民が集まっているのである。
 この集会は、「討論型世論調査」と呼ばれる手法によって進められたものである。この「調査」は、二つのプロセスから構成される。まず調査の第一段階として、通常の世論調査と同様に、母集団である市民全体からサンプリングされたサンプルに対して、1000人規模の世論調査を行う。その後、調査の第二段階として、その調査対象者の中から250人から300人のサンプルを一つの場所に集めて、世論調査の内容について集中的に討論する機会をつくる。私が見学した「藤沢のこれから、1日討論」は、この調査の第二段階の「集中討論」にあたる。
 集中討論に際して、事前に中立性に配慮して作成された資料およびデータ集が渡されるほか、討論集会の場では専門家や政策担当者からの情報提供の機会も用意される。これらの情報を元に市民は15名~20名程度のグループに分かれて討論を行い、市民間で意見を交換する。この情報提供と討論のプロセスを経て、第一段階と同じアンケートを行い、討論をする前と後でどのような意見変化が生まれたかを観察するというのが討論型世論調査の骨子である。
 このように、討論型世論調査は実に手の込んだ調査手法であり、通常の討論集会や世論調査に比べて、時間的・金銭的コストもかかる。それでも藤沢市が調査の実施に踏み込んだのは、市民の代表者に藤沢市の現状の強みや課題をよく理解してもらい、市民同士で意見を交換してもらった後に出てくる、市民の声こそ、藤沢市の政策づくりに活用していくべきものだと考えたからであろう。
実際、第一段階の世論調査結果と、討論後の世論調査結果とでは一定の差が出たと言う。いわば、資料を見ながら、長時間議論をした結果、市民が自らの意見を変えることもあったとみていいはずだ。この討論後の結果を、より熟成された市民の意見=世論と見るのが、「討論型世論調査」の狙いなのである。
藤沢市は、今回の調査結果を、現在作成している藤沢市の新総合計画(行政活動の基盤となる中長期的計画)に反映していく予定だという。単なる世論調査でもなく、特定の利害を反映しがちなタウンミーティングでもない、この「討論型世論調査」だからこそ、それを真摯に政策に反映させる、ということである。
 選挙で選ばれた議員と、行政のプロである官僚とで行われる「代議制政治」が、真の意味での民意を十分反映しうるものか、との疑問が呈されている。そこに、なんらかの直接民主制的な契機の導入が必要だ、と考えられたらこそ、「審議会」などの制度が作られてきたのである。
今回、15人ほどの小グループに分かれて、藤沢市の将来を熱心に討論する姿を見て、この「討論型世論調査」は、その一つの試みとして注目に値すると確信したものだ。

保育園民営化(横浜市のケース)

『公民連携白書 06-07』(時事通信社)、第9章(松原聡執筆)
 横浜市では、保育待機児童を大量に抱えながら、同時に保育ニーズの多様化への対応という課題も抱えていた。財政再建という大きな課題の中、横浜市は保育所民営化の方針を打ち出し、04,05,06年と1年4園ずつ、計12園を民営化し、今後同じペースでさらに民営化を進めることとなっている。
 しかし、04年の民営化に際して、一部の保護者家族から、保育所民営化を差し止め、損害賠償を求める訴訟を起こされた。06年5月、横浜地方裁判所は、民営化自体を違法としたわけではないが、04年の民営化については違法判断を下し、さらに原告である保護者家族に、一家族10万円の損害賠償を認め、この判決に対して、市は控訴することとなった。
 本稿では、横浜市における保育所民営化や裁判の経緯を整理しながら、自治体における保育行政のあり方について検討することとする。
1.横浜市保育の現状
1.1 激増する保育申し込み児童数と保育ニーズの多様化
 少子化が大きな社会問題となっている中で、横浜市では保育所入所申し込み数の増加に対して、保育所定員が追いつかずいわゆる「待機児童」が増加していた。このため、市は1997年に「緊急保育計画」、2001年に「よこはま子育て支援計画」を立て、待機児童対策を進め、02年には、「中期政策プラン」の中において、06年待機児童ゼロを打ち出すに至った。
 01年には、23,761人であった入所申し込み数は、06年には、32,999人まで9,238人増加している。5年間で4割近い増加率である。市はこの間に100ヶ所を越える保育所の増設などで保育定員を、22,700人から32,994人まで増やしていった。この結果、待機児童数は、02年の1140人を、06年、353人まで減らしていった。
 さらに、保育へのニーズは、保育時間延長や、一時保育、休日保育、夜間保育、病後児保育、乳児保育など、多様化していった。これは、女性の社会進出が進み、さらに保護者の勤務形態の多様化、保護者の子育てに対する意識変化などによるものと思われる。
 横浜市では、待機児童数の増加と、保育ニーズに多様化への対応という二つの大きな保育課題を背負っていたことになる。
1.2 保育ニーズへの対応の官民格差
 横浜市は、03年2月、市児童福祉審議会から「保育サービスの充実に受けて保育所のあり方と行政の役割はどうあるべきか」についての意見具申を受けた。
そこで「横浜市の保育施策について問題点・課題を整理」するとして、市の保育所の現状が取りまとめられた。03年1月段階での横浜市の認可保育所の設置数は261、うち公立(公設民営2を含む)127、民間134であった。定員は公立、10,758人、民間13,577人の合計24,335人であった。施設数では公立が49%、定員では44%を占めていたことになる。
 ここでの調査によって、保育時間延長等の保育サービスについて、公立と民間保育所において、顕著な差が出た(図表1)。18時30分を越えて保育を行っている保育所は、民間の96ヶ所(73%)に対して、公立ではなんとゼロであった。もっとも保護者からのニーズの大きい延長保育について、まったく対応できていない公立保育所の現状が見事にあぶりだされてしまった。
 さらに、一時保育についても、民間の42ヶ所(32%)に対しても、公立はゼロ。乳児保育も、民間の106ヶ所(81%)に対して、公立72ヶ所(57%)、外国人保育も、民間106ヶ所(81%)に対して、公立95箇所(75%)と差をつけられている。公立が民間を上回ったのは、公立が100%(民間55ヶ所、42%)実施している障害児保育ぐらいのものであった。
 いうまでもなく、これら公立、民間の261の保育所は認可保育所であり、建物や職員配置などの基準は児童福祉法で定められたものを同様に満たしている。さらに公立、民間問わず保育料は同じである。一般に民間に対して投げかけられる「安かろう、悪かろう」の懸念は、民間保育所が認可保育所であるかぎりありえないのである。
 さらに、この『意見具申』では運営経費の公立、民間比較も行われている。120人定員で、同等の開所時間や保育サービスを実施した場合の比較が示され、人件費では、公立が20.6%高く、事務費等を加えても、公立が17.0%高くなっている。敢えて言えば、公立の「高かろう、悪かろう」の実態が明らかにされた、ということである。
 問題は、その原因であるがこの『具申』では、
「公立保育所のニーズ対応が遅れる要因としては、予算制度の制約などがあること、また時間延長サービスの実施に見られるように、新たな保育サービスを提供する場合、公立保育所は公共の立場から広く均一に市民サービスを実施することが求められ、全区展開ないしは大型園全園実施など事業規模が大きくなる傾向があり、地域ごとに異なる様々な保育ニースに柔軟に対応することを難しくしているのではないかと考えられます。」
としている。
 しかし、公立保育所でも、時間延長、乳児保育、外国人保育では一部の園でのみ実施されており、全園実施しているわけではない。ここに述べられていない、公務員の労働条件への配慮等の原因があるとしか考えられない。
1.3 保育所民営化の提言
 こういった現状を踏まえて、『具申』で
「民間保育所が公立保育所に比べて「柔軟かつ効率的な運営が期待できる」点に着目し、今後は公立保育所の民営化について児童福祉を増進するという観点を踏まえて実施いていくことが必要」
との提言を出した。これを受けて、市では03年4月、『今後の重点保育施策(方針)-保育サービスのさらなる充実に向けてー』において、
「延長保育や一時保育、休日保育などの様々な保育ニーズが要望されていることから、地域で求められる保育ニーズに柔軟に対応することを目的として、私立保育所の民営化を進めます。」
との方針を示した。さらに、04年4月から、「私立保育所の多い区から順に各区1園ずつ移管し、年4園程度の民営化」することとし、丸山台保育園(港南区)、鶴ヶ峰保育園(旭区)、岸根保育園(港北区)、柿の木台保育園(青葉区)の4区を、初年度民営化園として選定した。
 また、民営化に際しては、『具申』で
「(ア)運営主体の選定に当たっては地域の保育ニーズを反映して保育サービスの向上を確実に期待できる事業者を選定すること
(イ)既に入所している児童に配慮し、保育内容・行事などの保育環境について急激な変更を行わないこと
(ウ)民営化に関する情報公開を積極的に行い、入所児童の保護者の意見・要望を聴きながら、保育の向上を図るという共通の目的にたった信頼関係の下に進めること
(エ)民営化後の行政が果たしていくべき役割・責任を明確にして保護者の不安を払拭すること」
という、民営化を円滑に進めるための条件を示していた。
 これを受けて、『方針』で、法人選定に際しては学識経験者、市民代表者等からなる『移管法人選考委員会』で
「保育目標及び保育内容(特別保育事業を含む)、サービスの質の向上及び利用者保護、理事長及び施設庁の資格等、資金計画及び経理状況等(保育資産・事業の資金繰り)」等を選考項目とし、さらに移管後の継続事項として「保育士の配置・年齢構成、保育時間、保育料、保護者の経費負担、休園日、年間行事、給食、健康診断、障害児保育」などをあげて、「移管予定の市立保育所で実施している保育内容及び新たな保育サービスの実施」の継続を義務付けるとした。
 こうして、以下の条件で民間移管が実施されることとなった。
  1.保育内容について
  ・障害児保育を引き続き行うこと。
  ・地域育児支援事業を引き続き行うこと。
  2.職員について
  ・入所児童数に応じて、本市法外基準にも基づく保育士等を確保すること。
  ・次のとおり経験者を確保すること
施設長 社会福祉事業の経験15年以上
  保育士 経験10年以上の保育士を2人以上
        経験5年以上の保育士を1/3以上
   
  3.新たな保育サービスについて
  ・幼児に対する主食の提供
  ・保育時間の延長
平日 7時から20時
土曜日7時から18時半
  ・一時保育の実施
  4.三者協議会について
  ・移管先法人は決定後、当該保育所の保護者、法人、横浜市からなる三者協議会に参加し、移管に関する諸事項に  ついて調整すること。
  5.第三者評価の受審について
  ・移管後、3年以内に第三者評価を受審すること
 これを受けて、市では以下のスケジュールで保育所民営化に取り組んでいった。
03年8月、移管法人の募集
03年10月、移管法人の決定
04年1から3月、法人への引継ぎ・共同保育
04年4月、移管(民営化)実施
さらにその後、05年4月、06年4月と各4園の移管が実施され、06年段階で12園が民営化された。
3.廃止取り消し訴訟
 この横浜市の保育所民営化において、04年4月に民営化された4園の保護者67家族が、市立保育園の民営化による「廃止処分」に対して、横浜市にその取り消しと各家族に20万円の損害賠償を求めて訴訟が起こした。これについて、06年5月、横浜地方裁判所は、「原告の保育所廃止処分取り消し請求は棄却。ただし、民営化を平成16年4月1日に実施するとしたことは違法と認定。損害賠償請求については、一世帯10万円の支払いを命ずる」とした判決を出した。自治体の保育所民営化については、大阪などで訴訟を受けているが、民営化そのものを違法としたわけではないが、民営化に伴う市立保育所廃止条例が違法とされたのは、全国でも初めてのケースであった。
 この訴訟では、まずこの民営化に関わる「横浜市保育所条例別表」から該当する4園を削除する条例について、「処分」にあたるとされた。原告の「保育所において保育を受ける権利」が、この条例によって侵害されたとして抗告訴訟の対象である処分にあたると判断された。
 さらに、この条例制定自体について、民営化自体は「最良の範囲内と解する余地もないではないが」としながらも、条例制定の1年後の平成16(04)年4月の民営化実施については、「裁量の範囲を逸脱、乱用するものとして違法」と判断された。
 つまり、まず保育所の民営化が訴訟の対象であり、その上で今回の民営化が性急であった点を違法とし、原告の損害を認めて1世帯10万円の国家賠償を認めたのである。
民営化の時期等の過程で自治体の手続の違法性を明確にした判決であり、大阪や札幌で行われている同様の訴訟や、今後の自治体の保育行政に与える影響は大きいと思われる。しかし、市は06年5月、市会に「控訴の提起」の議案を提出、可決されたため、東京高等裁判所に控訴することとなった。
横浜市は、保育所民営化によって、延長保育、一時保育どの大きなサービス向上が実現するとして、実際、保育サービスの大幅な向上が見られた。しかし、従来からの保育所利用者にとっては、現状が大きく変わるという不安感が大きく、裁判所に市が3ヶ月用意した移行期間や説明では不十分と判断されたのである。民営化される保育所利用者は、基本的にはその保育所のサービスに満足していたわけだから、それを民営化することの説明により丁寧であるべきだったと思われる。実際、市では05年以降の民営化では、説明等の期間を長く取り、その後は大きなトラブルには至っていない。
4.検証
 横浜市は、民営化に際して「第三者による受審」を明記したとおりに、2005年11月、04年に民営化した4園、および05年に民営化した4園について、移管の検証を行った。
保育園の定員や受け入れ年齢の継承、費用負担を府警に求めないこと、休園日や年間行事の継承、職員数や経験者の確保などは、民営化8園すべてで守られた。地域育児支援事業は、育児講座の実施で一部の園で06年度から実施など、若干の遅れが見られた。
 一方、幼児への主食の提供や、延長保育サービスの実施の「新たなサービス」は、全園で実施された。しかし、一時保育事業については、多くの園で「準備が整い次第実施」となっており、遅れは否めない。
さらに、運営費については、04年度から06年度の3年間で、156人の職員定数の削減、2億8千万円の縮減(18%減)を実現した。また、初年度の裁判になった保護者の説明の不足について、説明時期を早める等の対応をとっており、次年度以降は、大きなトラブルは発生していない。こうして、横浜市の保育所民営化について、概ね良好に推移しているとの判断がなされている。
 保育所の民営化は、単に財政支出の削減を目的に行われるべきものではない。実際、横浜市でも保育サービスの多様化への対応を第一に掲げており、民営化の結果として、財政支出の縮減が実現してことになっている。しかし、より一般的に言えば、すでに政府が国の諸活動を見直し、政府は企画立案を担い、実施機能については外部化する方針を示している。自治体においても、同様の実施機能の外部化が必要のはずである。
 横浜市では、国の基準を満たした認可保育所において、公立保育所が、民間保育所に比べて、サービスでもコストでも劣ることが明らかにていた。市立保育所を民営化すると言う判断は、極めて当然のものであった。
しかし、実際に市立保育所の保護者は、たとえば延長保育を必要としないからこそ、児童を市立保育所に通わせている。その保護者にとっては、民営化によって延長保育が可能になるというメリットよりは、民営化によって保育士が替わってしまう、という不安のほうが大きくなるのは、当然である。その意味で、市はより慎重な保護者への説明責任を果たすべきであった。
 しかし、保育所を民営化することで、大きく保育サービスは多様化し向上するし、実際に第三者による審査でもそれが確認されている。少子化が進む中で、今後自治体の保育行政のあり方がより厳しく問われることとなる。自治体と民間との役割分担の見直し、といった大きな視点で、この保育所民営化が議論される必要がある。

東京新聞掲載「政府予算案を読んでー急造予算、審議は慎重に

09年12月26日、東京新聞11面掲載
 来年度予算編成は、景気悪化による税収減(-8.7兆円)の中で、「マニフェストの実現(7.1兆円)」、「国債発行の上限設定(44.3兆円)」という、連立方程式を解く困難な作業であった。政権発足から3ヶ月半で、社会保障費を2.4兆円(9.8%)増やし、公共事業費を1.3兆円(18.3%)減らすという、自公政権とは大きく異なる予算をつくりあげた鳩山政権を評価したい。
 まず、対前年比3.8兆円増の92.3兆円の予算規模であるが、マニフェスト実施にかかわる経費増加を、事業仕分けなどによる経費節約で補填しきれなかった結果である。しかし、GDPの需給ギャップが40兆円とも見込まれる中で、財政規模の拡大はマクロ経済の観点から見ると、決して悪いことではない。しかし、政府のしっかりした経済財政展望が示されないまま、財政拡大がなされるのは問題である。ビジョンなきバラマキ的財政拡大では、将来の経済成長も見込めない。
マニフェストの目玉である子ども手当は、支給に所得制限をかけるか否かで議論が二転三転し、結局「制限なし」に決まった。高額所得者には、子育て支援の必要性は薄く、景気対策の観点からも、手当が消費に結びつく可能性も低い。所得制限を設けて、そこで浮いた分をより緊急度、必要性の高い分野に回すべきであった。
 一方、ガソリン暫定税率は維持に決まった。この政策は税収減となる上に、ガソリン消費を増やし、環境への悪影響も懸念されていた。過った政策が実施されなかったという観点から、この「マニフェスト破り」は歓迎したい。
 しかし、この予算は、埋蔵金に大きく依存し、マニフェストを大きく削ったものであった。また、マクロ経済展望もないままに、3ヶ月半で急遽まとめ上げたものであることも否定できない。国会での慎重な審議を期待したい。場合によっては予算修正もあっていいはずだ。何が何でも予算案を無修正で通そうとしてきた自民党との、国会運営の違いも見せてもらいたいものだ。

原発は安全か?その2

 原発に限らず、「安全」とか、「多重危機回避」とかよく言われる。しかし、絶対安全のはずの(大地震が起きないはずの)柏崎原発が、想定外の地震の発生で停止した。あってはならない「想定外」である。
 また、トラブル続きで17回も運用開始を延期した、六ヶ所村再処理工場も論外である。ありえないことが、17回も起こった、ということである。政府が科学的に言う「絶対安全」がいかにインチキか、がよくわかる。
 一方、原発の政策自体も大混乱である。45年間、原発のゴミである使用済み核燃料を処理できず、原発のサイトではそのゴミがあふれそうな状態。それを処理すべき再処理工場の運用開始が大幅遅れ。さらに、である。運用開始しても、処理能力は最大年800トン。日本の53の原発から出る量は1000トン。稼働してもたまる一方なのである。
 さらに、再処理と同時に出る高レベル廃棄物。これは、もっとも危険な廃棄物で、ガラスで固めて、30年冷やして、その上で、地下300メートルの地層に埋めるというもの。その埋める場所も決まっていない。
 政策も技術も、落第である。

原発は安全か

 民主党は、原発促進、社民党は抑制。両党の軋轢が問題になっている。その中で九州電力がプルサーマル発電を11月6日開始するとのこと。これは、国内の原発のゴミ(使用済み核燃料)を「再処理」して、MOX燃料として再び使うという「核燃料サイクル」の一環である。
 このMOX燃料を作るのが、青森県六ヶ所村の再処理工場。運用開始は、97年12月を予定していた。私自身も何回も現地に視察・見学に行った。しかし、相次ぐトラブルで、運用開始はなんと17回!!も延期。今は、2010年10月を予定している。当初より13年も遅れている。驚くばかりの、日本の原子力技術のずさんさである。六ヶ所村程度の再処理工場は、すでに世界中で稼働しているのに・・・。
 今回、九州電力で始めるプルサーマル発電の原料は、もちろん六ヶ所村で作られたものではなく、フランスから輸入したものである。そもそも、再処理工場が動かない、ということは、日本全国の原発で作られる廃棄物の処理ができない、ということである。
 日本で原発が始まったのが、1963年。以降45年、原発のゴミである使用済み核燃料の処理は行われないまま、今日に至っている。全国の原燃に1万トン以上の使用済み核燃料がたまっている。そして、これを処理しようと、六ヶ所村の再処理工場にはすでに、2000トン以上の使用済み核燃料が持ち込まれてしまっていて、たまる一方。容量が3000トンしかないので、受け入れを停止している状況である。
 また、日本全国の原発では、この再処理工場で作られたMOX燃料を使うプルサーマル発電を計画していたが、原料であるMOXが作られないので、その計画も全面見直し。
 日本の原子力政策は、根本の技術レベルのところで破綻していると言わざるを得ない。17回、13年の延期、建設費も3倍の2.2兆円に。この醜態を、前政権のツケをどう「処理」するのか。鳩山政権の原発政策に期待するしかない。