■「デジタル」化と「電子」化
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松原
『これからの日本を語ろう』第一回は、
中村伊知哉先生にお話を伺おうと
赤坂の融合研におじゃましています。
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中村
よろしくお願いします。
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松原
伊知哉さんとは、
通信放送改革で一緒に議論をしてきた仲。
総務省のタスクフォースではずっとご一緒でした。
また、僕は伊知哉さんのベースの大ファン!
コンサートは、たぶん全部聴きにいってるんじゃないかな。
これは僕が撮った写真。短パンに蝶ネクタイ!の伊知哉さん。
追っかけです(笑)

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中村
おそまつさまで。
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松原
さて、早速ですが、メディアが多様化したり、
通信・放送が融合したり、Twitterがでてきたりという中で、
情報通信関連の色々な概念も意味づけが
変わって来ているように思います。
こういった背景の中で、
情報通信分野の最先端で活躍している伊知哉さんに、
いろいろとお話を伺ってみたいと思っています。

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中村
わかりました。
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松原
まず、「デジタル」と「電子」という単語に注目してみようと。
「電子」出版という言葉がありますよね。
また、「電子」教科書も話題になっていますよね。
でも、伊知哉さんは「デジタル」教科書という言葉を使っている。
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中村
ええ。
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松原
例えばデジカメが出てきたときに、
従来のカメラをフィルムカメラと言うようになったし、
携帯電話が出てきて、家の電話を固定電話と言うようになった。
この様に、新しい製品、サービスが出てくると、
既存のものの名称にも変化が出てこざるをえない。
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中村
あぁ。
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松原
そこで最初の質問なんですが、
伊知哉さんとしては、デジタル書籍に対して、いままでの書籍、
デジタル教科書に対して、今の教科書を何と呼びます?

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中村
…今はただ、紙の教科書、といっていますね。

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松原
紙。
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中村
「デジタル」がもっと一般化すると、
どんどん言葉が替わって「アナログ教科書」
とかになるかも知れませんけど。
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松原
なるほど。他にも、リアル書籍、という言い方もあるけど
ちょっとなじまないなぁと。

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中村
そうすると、対立概念はバーチャルですからね。
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松原
そう。リアル書籍だと、バーチャル書籍になっちゃう。
では伊知哉さんとしては、今のところは紙、だと。
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中村
僕らはそう呼んでいますね。
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松原
「紙の書籍」、「紙の教科書」、ですね。
「の」が入るところが面白いけど、
リアル書籍よりはいいですよね。
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中村
ただ、デジタル教科書という人もいれば、
電子教科書という人もいる。
まだ、デジタル教科書というものを
イメージ出来ている人が少ないからでしょうね。
■「凄く新しい物が出てくる!」という感じ
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松原
伊知哉さんはなぜ、電子教科書、とは言わなかったんですか?
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中村
…孫さん(※)は電子教科書という言葉を選んでいたんです。
でも僕は、電子計算機という言葉に
イメージが引っ張られるのが嫌だった。
確かに、コンピュータを使うんですけど、
電子計算機だと計算機だから、電卓のイメージになる。

僕が、
何のためにデジタルを教育に持ち込むのかを考えたとき、
計算が速く出来るとか、反復継続出来る様な
学習環境をつくり出すことは目的ではなくて。
もっと別の…
例えば創造力とかコミュニケーション力を高めるという
ところから始めたかったので、そっちの名前にしたんです。
コンピューターが電子計算機から進化して、
Audio & Visualのマシンになってきたよね、と。
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※孫さん
孫正義。ソフトバンク株式会社代表取締役社長。
ソフトバンクは2010年7月に設立された
「デジタル教科書教材協議会」の幹事として
デジタル教科書の普及に参画。
松原
「電子教科書」がただの計算機を目指せば、
それを使いこなす技術やテクニックの話だけに
なってしまう懸念がある、と。
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中村
ええ。
やはり、教科書をデジタル化することに、
何を求めるか、が重要だと思うんです。
「創造性を高める」ということ、
「繋がる、共有できる」ということ、
「効率的になる、スピードアップになる」ということ、色々あります。
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松原
あぁ
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中村
スピードアップというのは電卓のイメージですよね。
電卓みたいにガンガン計算出来るように、というのは
百ます計算を進めている陰山 英男さん(※)とか。
こちらの話が多い。
孫さんとか、前の総務大臣の原口さん等は「繋がる」こと、
繋がることで生まれてくる物が多いよね、と。通信屋さん的な発想。
でも、繋がる、だけだと面白くない、というか、もったいない(笑)。
僕は創造力を高めましょうとか、クリエイティビティで話すことが多い。
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※陰山 英男さん
反復練習による基礎学力向上を目指す
「陰山メソッド」で知られる。百ます計算は
計算トレーニング方法の一つ。
松原
そこがキモですよね。

考えてみたら、「電子」オーディオって言わないですよね。
「デジタル」オーディオ。
電子って言葉は、最初に電子計算機と言ったから
未だに使われているけど、最近のものは「デジタル」。
でも、最後発で出てきた電子教科書とか電子書籍が、
最初からデジタル教科書とかデジタル書籍とならなかったのは、
その概念が、かなり古くからあったから、ということなんだろうね。
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中村
そこで電子出版とか電子書籍と聞くと、
いまある紙のメディア、アナログの物を
機械的に、効率的に置き換える、というニュアンスが強くて。
「凄く新しい物が出てくる!」という感じが薄れてしまう。

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松原
デジタル化する、と言うことが、
単に紙を印刷しないで済むから地球環境に良いよねとか、
出版のスピードがアップするとか、そういうレベルの話ではなくて。
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中村
そういう意味も大きいけれど、
もっと別の部分も大きいのではないか、
という感じが僕自身はしていて
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松原
他の可能性も出てくるはずで、
その部分を「効率化」でくくられたくないな、と。
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中村
僕が10年前にMITにいた時に
100ドルパソコン(※)を開発して、世界中の子供達に配って
インターネットに接続できるようにしましょうと提案したんです。
MITはすぐ「よっしゃ!」とのって、
MITのプロジェクトになったんですけど、
その時の目的はやっぱり、全ての子供達、世界中の子供達が
デジタル環境になれることで創造力が高まるとか、
コミュニケーションがしやすくなるとか、そういう概念だった。
新しい世界に触れましょう、と。
同じ話を日本に持ち帰ってきたら、
効率を求めるのか、とか…
教育現場に機械を持ち込むのか、という話になって
全然ダメだった。

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※100ドルPC
OLPC(One Laptop per Child)による、途上国の子供たちへノートPCを行き渡らせるプロジェクト。
松原
それが10年前。
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中村
10年前。
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松原
今の紙の教科書による教育が、
教育で本当に必要なこと…
…想像力とか、コミュニケーション能力をどうつけるとか、
覚える能力でなく調べる能力をどうつけるとか、
本来のそうした目的を果たせていない現状があるとすれば、
デジタル教科書は今の教育に対する革命になりますよね。
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中村
OECDの調査をみても、ここ6年くらいで日本の学力、
数学的なリテラシーが1位から10位くらいに下がってしまって。
これは大問題で、どうするんですか、と。
それでゆとり教育が批判されたりしていたわけですけど。

もっと大事なのは、それで日本の子供達に、
授業楽しいか、面白いか、役に立つかと聞くと、
国際的な解答よりもうーーーんと低いということ。
つまり学習意欲が低いというか、
「面白くない」と思っていることが大問題で、
ではそれをどうするのかと。
だから、
もっと刺激的で面白い学習が出来ないかと言うことが
求められていると思うんですけど、
一つのツールではあるでしょうね、デジタル教科書が。
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松原
特に、家庭学習の時間が日本はとても低いから
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中村
あぁ、家で勉強しない
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松原
それが、学習意欲が低いからなのか、
学校での勉強がつまらないからなのかを考えないと、
いくら家で宿題やりなさいと言ってもダメで。

勉強意欲がない、のではなくて、
学校での勉強がつまらないから
家でもしたくない、って思いたいですよね。
学校の授業がアトラクティブで、
デジタル教科書の端末を家に持って帰って、
またそこで弄っているということになっていけば…
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中村
そうですね。
それと、世の中が変わってきているという事。
求められる能力、それこそコミュニケーションや
クリエイトする力が大事になっている中、
…それは世界的にも同じだと思いますが…、
それに対するツールがあるかというと、
それはもうデジタルでしょう、と。
