kindleに見る電子書籍の可能性

(会員制雑誌に先週投稿した文章です)
 「リアル書籍」という言葉が生まれた。電子書籍に対する、従来の「紙」の書籍をさす言葉である。かつて、デジカメが普及し始めたときに、「フィルムカメラ」と従来のカメラを呼んだことを思い出す。
 電子書籍と言えば、書籍のネット通販の大手、アマゾンが2007年10月、アメリカ発売した電子書籍リーダーのkindleである。2009年10月には、このkindleが世界で発売され、日本でもアマゾンのHPから購入できるようになった。先日、これを入手。近いうちに、確実にこの電子ブックが、「リアル書籍」を凌駕する日がくることを確信した。ちょうど、CDの売り上げが、ピーク時の4割に落ち込んだことが報道された日であった。
 
 このkindle、価格は259ドルである。日本では、これに送料など36ドルかかり、合計295ドル、27000円ほどである。私の場合、注文後数日で到着した。それには、”welcome Satoru”と私の情報がインストールされており、アマゾンに事前登録していたパスワードを入力するだけで、すぐ好きな電子書籍をダウンロードすることができた。
 このkindleには、AT&TのSIMカードが内蔵されており、ローミングサービスで国内の3Gの携帯電話網につながる。パソコンを介することなく、日本のどこでも、アメリカから書籍をダウンロードできるのである。本体には2ギガのメモリがあり、書籍1500冊分が記録できる。
 ディスプレイは、白黒の電子ペーパー。目に優しく、バッテリーも1週間持つ。また、文字の大きさを6段階に変えることができる。老眼、恐るるに足らず、である。さらに、読み上げ機能も。音声は男性、女性から選べ、スピードも3種類、こちらも6種類の中から選べる。その読み上げのスムーズさには驚かされた。通勤電車の車内では「音声読み上げ」で、家に戻ってからは、ディスプレイで読む、といった使い方が自然にできそうであった。
 アメリカでは、30ドルほどで売られている「リアル書籍」が、電子版では10ドルほど。15冊買えば、リーダーであるkindleの元が取れることになる。先日、アップル社がタブレットPC、iPadを発表した。499ドルのこのパソコンも電子書籍対応をウリにしている。
 さて、このkindle、現段階では日本語には未対応。日本語対応には、縦書き、横書きの対応や、ルビをどうするかなどの技術的な問題もあるが、すでに、日本メーカーか日本語対応電子書籍リーダーは市販されている。問題は、アマゾンのような電子書籍を並べるサイトがないことである。
 日本の出版社が電子書籍に積極的ではないのは、印刷→製本→取り次ぎ→書店、という出版のビジネスモデルが崩れるからである。また、書籍には楽曲とは違い著作隣接権がないので、著者さえOKすれば、電子書籍出版はいつでも可能である。アマゾンが日本語対応して、著名な著者の何人かが自分のベストセラー書籍の電子化を契約した瞬間に、一気に日本の出版ビジネスモデルが崩れていくことになろう。CDは約10年で、売り上げが6割減となった。書籍もすぐに「リアル書籍」が席巻するわけではない。しかし、電子書籍に逆転される一歩が切られるのは間違いないということだ。
 
 こういった事態に対抗して、講談社、小学館、新潮社など国内21の出版社が、一般社団法人「日本電子書籍出版社協会」(仮称)を2月にも発足させることになった。ここを通さないと電子書籍販売ができないようにするといったことになると、電子書籍の健全な市場の発展は望めないだろう。この分野でもガラパゴス化がすすむことは避けなければならない。
 kindleでは、電子書籍の印税は70%にしている。ベストセラー作家でも、リアル書籍の印税は10%にすぎない。たとえば、1400円の本で彼らが受け取る印税140円を得るには、電子書籍では200円の値付けでいいことになる。書籍電子化の流れは、一気に加速するに違いない。